Pagoの部屋

ようこそPagoの部屋へ。管理人は、とっくに3人の子育てを終えたアラフィフ主婦です。大好きな絵本や食べること、そして心に沁みたことなどを記事にして綴っています。

ただ一度きりの桜の花びら

今週のお題「お花見」

 

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 わたしの職場のすぐ目の前に、歩道をはさんで桜の木々が数本並んでいます。このところの陽気に固かった蕾がいっきにほころび、今、桜の木々は五分咲きの花を枝にまとっています。仕事をしながら、ガラス越しにこの桜を眺めるのも今年で8度目になります。お弁当を作って、どこかへ出かけて桜を愛でるお花見ではないけれど、これがわたしのお花見です。

 

わたしにとって桜を眺めるのは花の季節に限っていません。桜の木は職場のそばだけでなく、わが家から見えるところにも桜並木があります。青々と茂る葉桜の時期、秋が訪れ葉が色づく時期、葉を散らし冬を耐え忍ぶ時期、蕾をふくらませて咲くときを待つ時期…。わざわざ眺めなくても桜の木々は一年を通して、わたしの目の端に映っている身近な木なのです。

 

そして今年も、弥生月の末となり花の季節が訪れました。

 

やがて満開になる桜は、やわらかな風にゆすられて花びらをこぼしはじめます。ひらひら、ひらひらと舞い落ちてくる薄桃色の花びらは、このうえなく綺麗ですよね。桜の木のそばを通る時は、思わず立ち止まり手のひらに受け止めてしまいます。

 

春が訪れるたびに咲く桜の花。その美しい姿は、昨年や一昨年と同じ姿をしています。けれど、ひとつとして同じ花はありません。見た目は同じでも、今年は今年の桜の花。去年や一昨年の花とは別の花です。そして、その小さな花のひとつひとつも、隣に並ぶそっくりの花ではないオンリーワン。ただひとつの花なんですよね。一年ごとに年輪を重ねる桜の木は同じでも、咲く花は、ひとつとして同じものがないのです。散る花びらも、一枚として同じものはないのです。

 

花だけでなく、人もそう…。ひとつひとつの出会いは、そんな風に、ただひとつきり。同じ出会いは二度と訪れません。だから粗末にしてはいけないなと…地面にこぼれている花びらを見ながら己に戒めています。世界に花も木もたくさんあるけれど、桜には不思議な力があるのでしょうか。特に春の桜は、しみじみと人生を重ねた風景を見せてくれる樹木のように思えてなりません。

 

2018年、春。巡ってきた桜の季節をまた迎えられたことに感謝をしています。

 

作家、畠中恵さんの著書『ちんぷんかん』〈しゃばけシリーズ〉の一番おわりに収められている短編に『はるがいくよ』というお話があります。ひと春きりの、はかない命しか持たない桜の花びらに宿る精の物語です。

 

生あるものが抗えない命の摂理…。『はるがいくよ』には、そんな命の愛おしさが、せつなく、やるせなく、美しく、あたたかく描かれています。

 

畠中恵さんの〈しゃばけシリーズ〉は、江戸時代を舞台にした妖怪ファンタジーです。ご存知の方も多いかと思いますが、まだ手に取られたことがない方は、ぜひ読んでみて下さい。人間模様に妖怪が絡んでいて本当に面白いです。それでいて、人としての在り方を考えさせられたり思いやりに気づかされたりと、心が豊かにふくらみます。とても読みやすく文体もリズミカルです。ぜひ、ぜひのおススメの本です。。。♪