Pagoの部屋

ようこそPagoの部屋へ。管理人は、とっくに3人の子育てを終えたアラフィフ主婦です。大好きな絵本や食べること、そして心に沁みたことなどを記事にして綴っています。

『海のピアノ』

日に日に、暑くなってきました。が好きな人にとっては、が恋しい季節ですね。わたしは泳げないのでは苦手ですが、砂浜や波の音は、とても好きです。そして、と聞けば思い出す物語があります。タイトルは『海のピアノ』で10分もあれば読めてしまう短いお話です。このお話は、児童書『雲のピアノ』*1に収められている、五話*2のファンタジーの中のひとつです。

  

雲のピアノ (わくわくライブラリー)

 

それでは『海のピアノ』のあらすじをざっくりと…。

 

主人公はおじさんで、名前は青木タミオさん。職業は、ピアノの調律師です。四月のある夜のこと、最終電車で帰ってきたおじさんを自転車置き場で待っていたのは、大きな黒ねこでした。黒ねこモンジロウと名を名乗り、「海のピアノを見てほしい」とお願いをします。。おじさんモンジロウは、満月の今夜が初対面。モンジロウは、ねこ新聞でピアノの調律師を探し、寄せられた返事からおじさんのことを知ったのでした。

 

間に合わなくなるから急いでと、モンジロウにせかされるままに自転車を走らせ、たどりついたのは海岸通り。ちょうど干潮のときで、波が引いて行く光景がおじさんの目に映ります。つぎにおじさんが見たのは、月の光にそまった青い砂浜にぽつりと立っている黒く四角なものでした。

 

「なんだ、あれは?」と、問うおじさんに「あれが海のピアノです」とモンジロウは答えます。このあとおじさん海のピアノを調律して音のくるいをなおしはじめます。。。それから、すっかり調律を終えピアノの音を確かめているうちにおじさんは何か曲を弾きたくなりました。

 

おじさんの指が動き出し、砂浜にピアノの美しいひびきがしみていきます。そして……。おじさんがショパンのノクターンを弾き終えたとたん、どっと拍手がわきおこります。見わたすと、いつの間に集まったのか、何十匹ものたくさんのねこ。みんなが笑いながら手をたたいていました。

 

そんな中、潮はまた満ちて来て波に追われるように、ねこたちと仕事カバンを持ったおじさんは、砂浜を走りだします。そして、みんなとにじ松の林にたどりつくと海の方を向き、波がいく重にもかさなりながらピアノを沈めていくのをながめます。

 

このシーンが描かれているページが、わたしはとても好きです。月明かりの砂浜、波うちぎわの海のピアノ、音楽のような波の音……。それから、それをながめるおじさんと、たくさんのねこたち……。目を閉じてこの光景を思い浮かべると、やさしい気持ちに包まれます。

 

いいなぁと思うセリフもあるので、にじ松の林にいるねこたちの声、おじさんの声、モンジロウの声をページから抜き出してみました。

 

『よかった、よかった。』

『あの子が、よろこぶよ。』

『あの子が、よろこぶよ』

『海の子たちも、よろこぶよう。』

 ねこたちのうれしそうな声が、波の音にまじって、またきこえだした。おじさんは、横に立っているモンジロウに小声できいた。

『あの子って、だれですか?』

『もちろん、人魚の子です』

と、モンジロウは遠くを見ながらつづけた。

『あの子が海のピアノをひくと、海の世界の子どもたちが、さかなもいかもたこも、みんなみんなよろこぶんですよ。』

 

中略

 

『人魚の子たちがよろこぶことが、そんなにうれしいなんて。』

 おじさんの胸に、あたたかいものがこみげてきた。

『わかった。きみたち、人魚の子と友だちでしょう。』

『いやいや、友だちでも、知りあいでもありません。』

 モンジロウは、はずかしそうにわらって、小声でつづけた。

『ただ気がついただけ。そして、おせっかいをやいた。それだけですよ。』

 

               『雲のピアノ』p26~28より

 

 

 誰かが喜ぶことを嬉しいと思える気持ち、ステキです……。物語の中のおじさんと同じで、わたしの胸にもあたたかいものがこみあげました。むかしむかし? 読み聞かせをしている頃、このシーンになると、おせっかいで、やさしいねこたちのセリフを真似て、子どもの口からも「よかった、よかった」の声がこぼれていたことを懐かしく思い出しました。

 

それにしても、ねこと話せるなんて、いいですね。絵本や児童文学の世界が、とても羨ましく思えます。いい歳をしたおばさんが、何を馬鹿なことをと笑われそうですが。。。 

*1:『雲のピアノ』あまんきみこ:作/いせひでこ:絵/講談社/第一刷発行:1995年2月20日/日本図書館協会選定図書

*2:『海のピアノ・黒ねこモンジロウの話』・『星のピアノ・ねこのチャスケは調律師』・『野のピアノ・野ねずみ保育園』・『森のピアノ・西の森きつね小学校』・『花のピアノ・子うさぎブンタの望遠鏡』