車のギアとボンネット

むかーし昔、デート中に起きたアクシデント?の話です。

 

国道の端っこに車を停めた彼氏は、たばこを買ってくるから待っていてと、助手席に私を残し車を降りました。道路には列を連ねて何台も車が停まっていて駐車した場所は、国道沿いのコンビニから少し離れていました。

 

横を走りすぎる車を眺めながら彼氏を待っていたのですが、あれっとわたしは異変に気付きました。車が勝手にとろとろと前へ動いているのです。たぶんゆるい傾斜になっていたのでしょう。免許もなければ車の知識なんてゼロです。え、え、え、え、え、と「え」をなんどつぶやいたことか……。どうしたら車を停められるのかわかりません。何も知らないのに車のあちこちをさわるわけにもいきません。

 

それでもわたしを乗せた車は、ゆっくりゆっくり前に停まっている車に近づいて行きます。何をしているのか彼氏はなかなか戻ってきません。このままではぶつかってしまうと思ったわたしは車を降りて、車の前に回りボンネットをおさえました。力づくで停めようとしたのです。

 

けれど後ろ向きで動く歩道に乗っているかのように、車に押されてずりずりとわたしも下がっていくのです。車と車に挟まれたら、どれだけ痛いのかしらと考えながらコンビニの方へ目をやるのですが、彼氏はもどってきません。ああ、もうすぐ挟まれちゃうんだ…と泣きそうになったときです。

 

どこから現れたのか、ひとりのお兄さんが助手席側のドアを開け、何やらギコギコ動かして車を停めてくれたのです。そのときはギアって名前も知りません。「もう、大丈夫やで」と笑って、反対車線のほうへ去っていきました。一瞬のことで自分が助けてもらったことに気づくのが遅れました。つまり、お礼を言いそびれたのです。

 

この出来事は、数分くらいで大した時間ではなかったのでしょうが、わたしにはとても長く感じました。事なきを得ても心臓はバクバクしていました。怖かったし不安だったし、彼氏が戻ってきたら、ぶつける文句を頭の中にいくつも並べました。

 

だけど助手席にもどり、徐々に落ち着いてくると安堵の方が大きかったのか怒る気力は消えていきました。やっともどってきたのんきそうな顔した彼氏には大変だった…といきさつを話し今度からはちゃんと停めてね…とお願いをしただけでした。

 

それは付き合い始めて間もないころの出来事。その後に結婚することになるとは、思っていなかったころの話です…。30数年の月日が流れましたが、たまに思い出して助手席に座ったときはギアに目をやってしまいます。。。まだ…一度もさわったことのないギア…。もしも同じようなことが起こったら、またわたしは車を降りてボンネットをおさえるのかな…。 なんて思いながら。。。

ご訪問ありがとうございました。。。♪