『おさらの ぞうさん』

『おさらのぞうさん』*1は、森山京(もりやま みやこ)さんが書かれた児童書で、杉浦範茂(すぎうら はんも)さんの絵で飾られています。どんなストーリーかと言うと、ひとりの女の子の赤ちゃんのときから7歳になるまでを綴った成長物語です。

 

おさらのぞうさん (おはなしだいすき)

 

女の子の名前は、マリコ。そして赤ちゃんのときから使っているお皿には、青色のぞうさんの絵が描かれています。離乳食からはじまり、成長とともに食べることができるものが増えていき、やがてマリコは、ハンバーグやオムレツ……などの大人と同じものを食べられるようになります。

 

青いぞうさんのお皿は、いつだってマリコのそばにいて、マリコの食べるものだけをのせ続けました。

 

お皿に食べ物をのせているときは見えない青いぞうさんが、マリコがひと口食べるごとに姿を現してきます。お皿が空っぽになると、青いぞうさんは「ばあー」と全身を見せるのです。おかあさんに食べさせてもらっていたころも、よちよち歩きはじめたころも、マリコはお皿の青いぞうさんが大好きでした。

 

はじめての動物園は2歳になったとき。本物の像を見てもお皿の青いぞうさんとのあまりの違いに、マリコは像とぞうさんがむすびつきません。マリコが知っているのは、丸いお皿の青いぞうさんだけなのです。

 

3歳になったマリコは、お皿の青いぞうさんに『ぞうさん』の童謡を歌って聴かせたり、ぞうさんの絵を描くようになりました。青いぞうさんばかりを書くので、マリコのクレヨンは青色だけがたちまち短くなりました。

 

マリコが4歳になったときに弟が生まれました。おかあさんは、青いぞうさんのお皿を弟に譲ってあげましょう…と、マリコに言いました。もう、マリコにはお皿も小さくなってしまったのです。けれどマリコは、どうしてもうなずけません。

 

いつまでも赤ちゃんのお皿じゃおかしいじゃないか…と言うおとうさんに、「いいの。このお皿は、ずっとずっとわたしのものなの」と、マリコはお皿を手に取ってポロポロ泣きました。おかあさんはあきらめて、弟には新しいお皿を買いました。

 

幼稚園へ行くようになっても、ぞうさんのお皿を使い続けるマリコ…。その頃には、本物の像が青色ではなく灰色で、陸に住む動物の中ではいちばん大きいことも知るようになっていました。知ってはいるけれど、マリコにとってのぞうさんは、やっぱりお皿の青いぞうさんだけなのです。。。

 

それでも、あることをきっかけに、大好きなお皿の青いぞうさんと別れるときをマリコは自分で決めます。そして月日が流れ、ある日お皿のぞうさんと再会します。そのときにマリコは本の表紙のイラストのようにお皿にバラのつぼみをのせました。

 

物語は、ここで終わります。

 

すっかり小さくなってしまったお皿は、もうマリコのための食べ物をのせません。。ラストシーンでマリコがお皿にのせたものは、テーブルの花瓶にさしてあった赤いバラのつぼみでした。

 

成長していくための大切な食べ物、生きていくために必要な食べ物…。そのありがたさやお皿の役割もじんわりと感じます。子どもの成長とその心をやさしくすくいあげた、嬉しいような、切ないような、あたたかな物語です。

 

ほとんどネタバレの記事になりましたが、マリコの細やかな心理描写やマリコがお皿のぞうさんと別れを決めたシーンにご関心のある方は、図書館などで本を手に取ってみてくださいね。。。

 

子どもはマリコに共感しながら……。大人は、マリコに子どもだった自分やわが子を重ねながら……。読後はきっと、やさしくあたたかな気持ちに包まれることと思います。。。♪

 

 

*1:『おさらのぞうさん』小峰書房/2003年6月18日第1刷発行

ご訪問ありがとうございました。。。♪