母と子のきずな

児童書『さいごの恐竜ディラン I'll stay with you』の帯には、作者である村山由香さんのこんな言葉が書かれています。そのままを書き写してみました。。。

「夢はきっと叶う」とか、「正義は必ず勝つ」とか

私たちはとっくにそれが嘘だと知っているのに、子供に向かって同じ言葉をくり返しています。

世の中、本当はそんなに甘くない。

それでも人は、心の中にひとつでいい、

死んでも守りぬくと言えるものを持たなくてはならないのだと思います。

私はこの小さな作品を、子どもたちと、そして子どもの心をなくさずにいるばかりに

いろいろなことに傷ついている大人たちに向けて書きました。

 

村山由香

 

その著書が、こちらです。。。

さいごの恐竜ティラン I'll stay with you

この本は、楽しいお話でも、ハッピーエンドのお話でもありません。

 

はじめて読んだときは、やるせなくて哀しい気持ちでいっぱいになりました。

 

けれど2度目に読み返したとき、作者である村山由香さんの「それでも人は、心の中にひとつでいい、死んでも守りぬくと言えるものを持たなくてはならないのだと思います」の言葉が深く心に沁みたのです。

 

ああ、そういうことか…と、村山由香さんの伝えたかったことが、ストンと胸の中に落ちました。

 

ほぼ、ネタバレになってしまいますが、物語のあらすじをざっくりと書きます。

 

草食恐竜の若いお母さんザウルスは、しあわせに暮らしていましたが、ティラノサウルスに夫をうばわれ、夫を探しに行っている間に、卵からかえったばかりの5匹の子どもたちまで失ってしまいました。家族の中、たったひとり残されてしまったのです。

 

ある日、哀しみのどん底にいたお母さんザウルスは、親をなくしたティラノサウルスの卵と出会います。この卵の存在が生る気力がなくやせ細っていたお母さんザウルスの希望となるのです。お母さんザウルスは、ティラノサウルスの卵だと分かっていて卵を育てることにしました。

 

大切に見守り続けた卵から、やがてティラノサウルスの赤ちゃんが生まれ、ティランと名づけられます。ティランは見た目は恐ろしいのですが、お母さんザウルスの大きな愛に包まれて、とても優しい男の子に育ちます。生きていくために鳥や魚を食べるけれど、おとなしく気弱で他の恐竜を襲うことはありません。

 

平和でしあわせな日々が続くかのように思えたのですが、大地に隕石が降ってきてあたりは火の海となり、たくさんの恐竜や生き物たちが死に絶えました。そのあとに大地を襲ったのはものすごい寒さの氷河期…。この大きな環境の変化は、お母さんザウルスとティランの平和な暮らしを奪ってしまいました。

 

草木の生えぬ大地から草食恐竜たちが次々と姿を消し、生き残り餓えた肉食恐竜たちが我こそ生き残ろうと不毛の大地は殺伐とします。お母さんザウルスはティランを生かそうと己を食べるようにいいます。もちろんティランは聞き入れません。一方ティランは、肉食恐竜からお母さんザウルスを守ろうと気弱な性格に勇気を奮い立たせました。

 

そして……。

 

物語は、哀しく終わります。

 

だけど、母子の強いきずなと、たがいの命を思う深い愛が、じんじんと伝わってきます。

 

なので、この物語は哀しい物語ではあるけれど、しあわせな物語でもある……のかもしれません。。。改めて冒頭の村山由香さんの言葉を読み返しながら、そんなことも思いました。。。

 

おしまいに…「I'll stay with you」…表紙タイトルしたの、この言葉…あったかいですね。。。♪

 

ご訪問ありがとうございました。。。♪