絵本『アーチボルドおじさん』

 

アーチボルドおじさん (くもんの絵童話)

 この町の人なら だれでも、
アーチボルドおじさんの家を しっています。
木でできた ペリカンが、にわにあるのは、
町じゅうで ここだけです。
小さくて、ふるぼけていて、いっぷうかわった この家は、
アーチボルドおじさんに そっくりでした。

 

 イブ・タルレの絵本『アーチボルドおじさん』の始まりのページに書かれている文章です。

 

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その挿絵がこちら…。 文章が書かれているところを削ったので、完全な挿絵ではないんですけどね。ほら、アパートにはさまれた赤い屋根の家が、アーチボルドおじさんの家です。左の植え込みのかげから顔をのぞかせている木のペリカンが見えるでしょう。。。

 

このペリカン…。おじさんの話では、記念品らしいのです。

 

何の記念ってね、昔おじさんが船長だったときに7つの海をのりこえて、宝物を探したり恐竜を捕まえたときの記念なんだとか……。

 

おじさんは話好きで、そんな夢みたいなことを紙の船で遊んでいる子どもたちに語るのです。

 

ところが別の日には、ちがう昔の話をして、子どもたちに「あれあれ、おかしいな。おじさんは、7つの海を たびしていたんじゃなかったの?」と聞かれます。するとおじさんは、首をひねって、「そういやあ、わしは、音楽家だったことがあるんじゃよ」と、昔の話をころころと変えるのです。

 

それから、おじさんは大人なんだけど、いたずらしたりふざけたりするのも大好きなのです。ページをめくるごとに、おじさんのいたずらが続きます。でも……。絵本の文中にも書いてありますが、少しも悪気がないんですよ。

 

だから、町の子どもたちは、そんなおじさんのことを楽しい人だなぁって思っているんです。

 

だけど、大人たちは、そうは思いません。

 

「やっぱり かわいそうな人だわね。ねえ、そう おもうでしょう?」「おじさんのいたずらや とほうもないはなしは、もう たくさん」
「ねえ、おじさん。なんにもいわずに、ここを 出ていってくれないか」
「おじさんのような人が くらしているところが あるんだ。そこへ いったほうがいい」

 

そう、思っているんです……。

 

つまり、町から追い出したいんですね。。。

 

ある日、おじさんの家の前に大きなトラックが停まって、おじさんの大切な持ち物が、どんどん積み込まれて…もちろん、あの木のペリカンも……。そして、おじさんも、看護師らしい人に付き添われて、もう一台の車に乗せられて行ってしまうのです。

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看護師らしい人に…って言うのは文中にありません。挿絵だけです。おじさんの肩にそっと手をかけて、車に乗るよう促しています。

 

「これが、おじさんの ためなんだ」

大人たちは、言うのだけれど、本当にそうなのかしら……?

 

なんだか、ちょと辛いページです。。。

 

 

 

 

そんなこんなで、おじさんが町からいなくなって……。

 

 

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町は急に、静かになりました。。。

アーチボルドおじさんの家も寂しそうです。

 

すると……です。

 

誰もが、おじさんがいないと何だか変だなと言いあうようになるのです。

 

なん日かが、すぎました。
けれども、いつまでたっても
町は どこか おかしいのです。
にぎやかな わらいごえは
どこへ いったのでしょう。
しんじられないような ゆかいなはなしを
してくれた人が、いないのです。
町じゅうに、ひなぎくを くばって
あるいていた人が、いないのです。
------そう、アーチボルドおじさんが
いないのです。

 

おじさんがいなくなって、子どもたちが言いました。

「つまらない」と…。

 

「さびしいな」大人たちも言いました。

大人たちは、自分たちが間違っていたと気づきます。

 

そして、そして……。

 

わたしの絵本記事は、いつもネタバレしているのですが、いちばん書きたいことがラストにあったりするのです。

 

さてさて、このあとみんなで、おじさんを迎えに行きました。

おじさんが町に必要な人だと気づいたからです。

 

とんとんと事は運び、おじさんの持ち物を乗せて大きなトラックが小さな家に帰ってきます。こうして、おじさんは、もといた場所に帰ってくるのです。

 

アーチボルドおじさんは、胸をはって言いました。

町を離れていた間のことを…です。

 

 「ちょっくら、るすに しとったよ。
よその わく星に、ようじが あってな。
そこで くらそうと おもったんじゃ。だが、えらく さびしいところじゃった。わしがすむ 家もなければ、にわもない。
それに、ともだちが ひとりもいないときとるんじゃ。
だから、わしは かえってきたよ。
やっぱり、ここが いちばんじゃ。」

 

なんてやさしい作り話…。なんて素直で無垢な言葉…。

誰のことも怒っていないし恨んでもいないなんて、ほんとにステキです。。。

 

この絵本は、上記のおじさんのセリフで終わります。

「だから、わしは かえってきたよ。
やっぱり、ここが いちばんじゃ。」

心が、きゅんとして、ほっこりとして、

「ああ、よかったぁ」と絵本を閉じることができます。

挿絵も可愛くて、わたしの好きな絵本の一冊です。

 

気づかなくても、大切なことって、そばにあったりしますよね。

失ってから、それがどんなに大切だったのかに気づいたり……。

それが、アーチボルドおじさんのように、迎えに行けるものだといいのだけれど、

二度と取り戻せないものだって……ありますよね。。。

 

だから、だから。

 

やわらかで、しなやかで、深く広い心になれるよう、心を育てたいなと思います。

いくつになっても、この世を去るまでずっと…。

 

わたしにとってのアーチボルドおじさんを見失わないように。。。

 

※ 『アーチボルドおじさん』文・絵:イブ・タルレ/訳:清水 奈緒子/公文の絵童話

ご訪問ありがとうございました。。。♪