3▶太古の媼モーラ◀『はてしない物語』より

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はじめに

前回は、黒ケンタウロスのカイロンに見送られてアトレーユが旅立ち、闇から生まれた暗きものが、アトレーユを追い始めたところで終わりました。今日は、そのつづきです。それでは第3章に新たに登場するキャラクターを紹介します。

 

樹皮トロル……節くれだった木の幹そのものに見える大男や大女。たいていは身動きせずに立っているが、たまに動く。途方もない力持ちである。

モーラ……憂いの沼に住んでいる太古の媼(おうな)。ファンタージエンのあらゆる生きものより年を取った生きもの。

 

あらすじ

旅の7日目、アトレーユハウレの森で出会った3人の樹皮トロルたちは、みな体の一部をなくした無残な姿をしていました。それは虚無の仕業でした。痛みはないのですが、一部がなくなれば、毎日少しづつ体がなくなっていくのです。そして、やがては、すっかりなくなってしまうのです。

 

これまでは、ファンタージエンの各地で起こっている恐ろしいできごとについて、アトレーユは、カイロンから聞いた話しか知りませんでした。樹皮トロルの痛々しい姿に驚いただけでなく、樹皮トロルたちの案内で虚無が広がる場所に立ったアトレーユは、そこにあったはずのもの全てが、無になった景色を目の当たりにします。そこで、ファンタージエン全土に広がりつつある恐怖をはじめて、はっきりと理解したのです。

 

この日の夜、アトレーユは夢をみます。旅に出てから何度も見ている大きな牡牛の夢です。牡牛は、狩人だったアトレーユに命を救われたことの礼として「今度はおれがお前を助けてやるぞ」と、アトレーユ憂いの沼に棲む太古の媼モーラをたずねることをすすめます。

 

 アトレーユは、牡牛の助言通りに憂いの沼をめざして北へ北へと馬を駆りました。憂いの沼に棲む太古の媼モーラに教えをもらうために。モーラは、ファンタージエンのあらゆる生きものより年をとった生きものなので、幼ごころの君の病を治す方法を知っているのかもしれないのです。

 

幾日もかけてやっとたどりついた憂いの沼は、水が黒ずんでいて不気味な沼でした。けれどモーラがいる沼地の真ん中にあるという甲羅山(こうらさん)を探すためには、その沼の中を進んでいかなければなりません。

 

アトレーユと愛馬アルタクスは、沼の中を進んでいましたが、進むごとにアルタクスだけが沼に沈んでいくのです。進むごとにアルタクスの憂いが大きくなり、生きる希望が薄れていくのです。首にかけているアウリンの力でアトレーユは、守られていました。それに気づいたアトレーユは、その鎖をアルタクスの首にかけようとするのですが、アルタクスに拒まれます。悲しくもアトレーユは、アルタクスと永遠の別れをしたのです。

 

先へ、ただ先へと沼を渡り続けたアトレーユは、ようやくのことで甲羅山を見つけます。しかし山だと思ったものは巨大な亀で、この亀こそが太古の媼、モーラでした。このときまで、アトレーユモーラが亀だとは、知らなかったのです。(上の扉絵がモーラです)

 

憂いの沼に棲むモーラは、希望を持っておらず、女王幼ごころの君ファンタージエンを救うことに無関心でした。ですから、最初はアトレーユに何も教えてくれませんでした。けれどアトレーユと言葉のやり取りをするうちに、気持ちが動きます。

 

幼ごころの君の死は、ファンタージエンの滅亡と繋がっています。幼ごころの君を救うには、新しい名前が必要だとモーラは教えてくれます。しかし、その新しい名前はファンタージエンに住む者には、つけることができないというのです。

 

その名前をつけられる者が誰なのかは、モーラも知りません。南のお告げ所ウユララなら知っているであろうと教えてはくれたのですが、その場所は、南のはるかかなたで、とてつもなく遠く、おまえが生きているうちにたどりつくことができないと、モーラは言い捨てて、目をとじてしまいました。(この下の幼ごころの君の名前を参照
 

そして、アトレーユはこれ以上はモーラから聞き出すことは不可能だと悟ります。

 

これと時を同じくして、闇から生まれた暗きものが、アトレーユのにおいを突き止め、憂いの沼への道をたどりはじめました。

 

幼ごころの君の名前

幼ごころの君の名前について、太古の媼モーラアトレーユに語った内容を、短くまとめてみました。

 わしらは、もう長いこと生きておる。長すぎるほど生きておる。幼ごころの君はそのわしらよりまだずっと昔からおられる。それでいて、年はとられん。幼ごころの君の存在は時の長さではかられるのではのうて、名前によるのじゃ。くりかえしくりかえし、新しい名前がいるのじゃ。幼ごころの君は、これまでにたくさんの名前を持たれた。それがみんな忘れられてしもうた。幼ごころの君は、お名前なしに生きておいでになれぬ。

 

女王幼ごころの君は、今、名前をみなに忘れられて名前を持っていないのです。あたらしい名前をつけてもらうことによって病気が治り元気になるということなのです。

少年バスチアン

アトレーユと愛馬アルタクスのと永遠の別れのシーンでは、涙で本が読めなくなったバスチアンも、ここまで読み進めてくることができました。バスチアンは、ファンタージエンには、幼ごころの君に名前をつけてあげられる者がいないことを不思議に思います。自分ならつけてあげるのは、得意なのに…とも。そして、アトレーユ暗きものにつかまらないことを祈りながら、ふたたび『はてしない物語』の先を読み進めていきます。

 

おしまいに

 南のお告げどころは、生きているうちにたどりつけないほど、はるかかなたと遠いと教えられました。そうであるならアトレーユはどこへ向かって旅をつづけるのでしょうか。また、アトレーユは、闇から生まれた暗きものに追いつかれてしまうのでしょうか。次回は第4章『群衆者イグラムール』です。

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