4・▶群衆者イグラムール◀『はてしない物語』より

 

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はじめに

前回は、愛馬アルタクスとの悲しい別れがありました。それから太古の媼モーラから、幼ごころの君を救うには新しい名前が必要であることを聞くことができました。しかしファンタージエンの住人には、新しい名前をつけることができないと言うのです。さらに、その名前をつけられる者を知っているのは、南のお告げ所にいるウユララだと教えられたのですが、その場所はあまりに遠すぎて…。

 

それでは、この章に登場するキャラクターを紹介します。

 

イグラムール……死の山脈の奥深くにある奈落の裂け目に棲んでいる。群衆者と呼ばれている。(何故、そう呼ばれているかは、あらすじで)

幸いの竜……真珠貝色のうろこがうすい桃色や白に光る長いしなやかな体を持つ。獅子に似た顔にある瞳はルビーのように赤い。

 

あらすじ

憂いの沼をあとにしてから二日後、アトレーユ死の山脈に迷い込んでしまいました。そのころ暗きものもアトレーユのあとを追って、死の山脈の荒れ野をひたひたと進んでいました。この章で、これまでは影のようだった暗きものの輪郭がはっきりわかるようになります。暗きものは牡牛ほどもある大きくまっ黒なの姿となっていました。

 

さて、死の山脈を疲れ果てた状態で、それでも先へ先へと進んだアトレーユは、やっとのことで奈落の裂け目に、たどり着きました。そこには、深い谷を渡るように巨大な蜘蛛の巣が張られていました。そして、その綱のように太いねばねばした糸には、大きな白い幸いの竜がかかっていたのです。幸いの竜を捕えていたのは、群衆者と呼ばれるイグラムールでした。

 

奈落の裂け目に棲むイグラムールは、たえまなく姿かたちを変える黒雲のような生きもので、大きな蜘蛛の姿や大きなサソリの姿に変じて、幸いの竜に襲いかかっていました。幸いの竜の体は傷だらけになり、かなり弱っていました。

 

実は、この気味の悪い恐ろしい生きものは、ひとつの個体ではなく、無数の小さなはがね色の昆虫の集まりでした。ぶんぶんうなりながら、びっしりかたまりあい、たえず形を変えていました。群れてひとつの個体のように見せかけることからイグラムールは、群衆者と呼ばれるのです。

 

アトレーユは、幼ごころの君から与えられているアウリンをかざし、南のお告げ所へ行くために、幸いの竜が欲しいとイグラムールに訴えます。南のお告げ所は、アトレーユの足では一生をかけてもたどりつけないほど、はるかに遠いのです。

 

しかし、どれほど遠くても、そこへ行かなければ、女王幼ごころの君に新しい名前を差し上げることが出来る者が誰なのか、知ることができないのです。名前を差し上げなければ、病に臥せっている幼ごころの君の命は尽きてファンタージエンも滅びてしまうのです。

 

アトレーユが望んでもイグラムールは、幸いの竜をゆずる気はありません。けれど、幸いの竜の背中に乗らなくても南のお告げ所行ける力を自分なら授けてやれると言いだしました。

 

その方法は、アトレーユの体のどこかをひと咬みさせて、イグラムールの毒を体に入れることでした。毒により1時間しか命が持たない代わりに瞬時に行きたい場所へ移動できる力を得ることができるのだと、イグラムールの秘密の力を明かされます。

 

アトレーユは考えあぐねた末に、イグラムールのすすめを受け入れます。すると、はがね色の雲…そうイグラムールが目にも止まらぬ早さで、アトレーユに襲いかかりました。左肩に鋭い痛みを感じながらアトレーユは「南のお告げ所へ!」と念じました。そのとたん、目の前が真っ暗になりました。

 

最後にあののことも話しておきましょう。アトレーユの臭いを追いかけて、わずかな差で、(暗きもの)は、奈落の裂け目に走りつきました。けれどそこにあったのは、巨大な蜘蛛の巣だけで、ほかに誰もいませんでした。アトレーユの臭いもぷつりととだえていたのです。

 

少年バスチアン

この章から、バスチアン『はてしない物語』の世界に入っていくようになります。本を読みながら思わず発してしまったバスチアンの声が、どうやら物語の世界のアトレーユイグラムールの耳に届いたかと思える現象が起こったのです。

 

この出来事に、バスチアンはこの本が気味悪くなってきたところで、この章は終わります。

おしまいに

残り1時間の命と引き換えに南のお告げどころに瞬時で移動する力を得たアトレーユ……。果たして、イグラムールの言ったことは真実で無事に南のお告げ所へ行くことができるのでしょうか。そして幸いの竜の運命はいかに。次回は5章『夫婦隠者』です。

 

 

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